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AI研究

27Bの小型AIモデルが科学再現でClaude Opus 4.8とGPT-5.5を凌駕

2026年8月23日6 分で読了
27Bの小型AIモデルが科学再現でClaude Opus 4.8とGPT-5.5を凌駕

ニュース概要

元Google DeepMindの研究員らによって設立されたロンドンのAIラボInherentは、米国東部時間2026年8月22日、同社のAI研究エージェントFaradayが、困難な新ベンチマークにおいてAnthropicやOpenAIの最先端大規模システムを上回る性能を示したと発表しました。このベンチマークは、事前に答えを与えられることなく、発表済みの科学論文の結果を自律的に再現するものです。この主張が注目されるのは、勝利そのものだけでなく、その背後にあるモデル規模の差にあります。Faradayは比較的小規模な270億パラメータのモデルで動作しますが、それを破られたClaude Opus 4.8とGPT-5.5は、いずれもはるかに大規模な汎用最先端モデルだからです。

Inherentとは何者か

Inherentは2026年5月に5000万ドルのシードラウンドを経てステルスモードから姿を現しました。同社は4人の共同創業者によって設立され、うち3人は以前Google DeepMindに在籍していました。チーフサイエンティストを務めるEdward Hughes、Louis Kirsch、Kaloyan Aleksiev、そしてTantum Collinsです。チームはロンドンのキングスクロス地区を拠点とし、現在の従業員数は約12名ですが、年末までに20〜25名体制への拡大を計画しています。独自のコーディングツールをゼロから構築するのではなく、Inherentは生のコーディング作業にOpenAIのGPT-5.5 Codexを活用し、その代わりに研究リソースを、創業者らがより重要だと考える、より限定された問題に集中させる道を選びました。

核となるアイデア:「研究センス」の習得

Hughesは、同社の中核的な賭けを、AIシステムに「研究センス」を教えることだと説明しています。これは、どの実験を行う価値があるか、どのように適切に設計するか、そして結果が信頼できるかどうかを見極める直感のことです。Inherentの定義によれば、既存のほとんどのAIコーディングエージェントは明確に指定された指示の実行には優れていますが、実行前後に必要な判断、すなわち仮説の立案、最初に何をテストすべきかの決定、結果が妥当かどうかの評価においては弱点を抱えています。同社によると、Faradayはこのギャップを埋めるために構築されており、機械的なコーディング作業を別のコーディングモデルに委任し、自身はより高レベルの科学的推論に集中する「ディレクター」として機能します。

Faradayのテスト方法:Replicaベンチマーク

このアイデアを評価するため、InherentはReplicaと呼ばれる新ベンチマークを構築しました。これは自然言語処理、材料科学、気象予報などの分野を網羅する100本の機械学習および科学向けAI論文から抽出された310のタスクで構成されています。各タスクでは、発表済みの論文から結果図表の一つを削除し、元のグラフにアクセスできない状態で、かつ限られた時間と計算リソースの制約の中で、実際に基礎となる実験を実行してその結果を再現するようエージェントに求めます。研究論文は通常、最終的に成功した方法のみを記述し、そこに至るまでの失敗した試みや欠落したハイパーパラメータ、前処理ステップなどは省略されているため、このベンチマークは、エージェントがInherentチームの言うところの、最終論文には決して載らない「99%の汗」を復元できるかどうかを試すように設計されています。

Faradayは242の再現タスクで訓練され、その後、訓練中には見ていない68の未使用タスクで評価されました。この未使用セットにおいて、Faradayは0.791を記録し、0.748のClaude Opus 4.8と0.729のGPT-5.5を上回り、個別タスクの60%で完全勝利を収めました。Inherentの報告によると、FaradayはReplicaスイートのすべてのカテゴリにおいて、両方の大規模モデルよりも忠実度の高い再現を実現しており、特にメタラーニング、構造生物学、材料科学のタスクで最も大きな差がつきました。

訓練アプローチ

Faradayは長期的視野に基づく強化学習を用いて訓練されており、汎用コーディングエージェントは置き換える対象ではなく、Faradayが指揮するツールとして機能します。訓練の安定性を保つため、Inherentの研究員は成果物の採点にAI判定器のみに依存するのではなく、タスクごとの採点ルーブリックを使用しました。これは、ルーブリックに基づく採点がより一貫性があり、ノイズの少ない報酬シグナルを生み出したためです。チームはまた、訓練中に複数のサンプルを集約し、ターンレベルのクレジット割り当てを適用しました。これにより、モデルは単一の最終結果からだけでなく、長いアクションシーケンス全体から学習できるようになります。注目すべき点として、Inherentは、Faradayが訓練時には以前の小規模なコーディングモデルであるGPT-5.4-miniを指揮するように訓練されていたものの、追加の再訓練なしに、テスト時にはより高性能なGPT-5.5 Codexを指揮するようスキルを一般化できたと述べています。同社はこれを、教え込んでいる「ディレクター」スキルが、利用可能な基礎コーディングツールの種類にある程度依存しないものである証拠だと主張しています。

背景とその意義

Inherentは、ReplicaベンチマークとそこでのFaradayの性能を、同社のより大きな野望に対する初期の証明として位置づけています。その野望とは、単にコーディングタスクを自動化するだけでなく、科学的発見を有意義に加速できるAIシステムを構築することです。この方向性を追求しているのは同社だけではありません。AI研究プロセス自体の一部を自動化することは、実験の設計、実行、評価のどれほどをAIシステムに任せられるかを各ラボが探求する中で、分野全体で活発な関心領域となっています。Inherentの具体的な貢献は、単純な指示では特定することが最も難しい、判断を多く要する研究部分に的を絞ったベンチマークと訓練レシピ、そしてより小規模で特化した訓練を受けたモデルが、その特定のスキルにおいて、はるかに大規模な汎用システムと同等以上の性能を発揮できることを示唆する初期の結果にあります。

AI研究DeepMind出身者