日本のAIユニコーンLayerXが1億ドルのシリーズB資金調達を完了 TCVの日本初投資プロジェクトに

概要
日本のAI SaaSスタートアップ企業LayerXは9月1日、シリーズBラウンドで1億ドルの資金調達を完了したと発表しました。このラウンドは米国のTechnology Cross Ventures (TCV) がリードインベスターを務め、TCVにとって初の日本スタートアップ企業への投資となります。今回の資金調達により、LayerXの累計調達額は1億9,220万ドルに達し、評価額は約5億ドルとなり、日本のシリーズB段階における最大規模の資金調達事例の一つとなりました。
企業背景と事業モデル
LayerXは2018年に連続起業家である福島良典氏によって設立され、企業向けにAIを活用したバックオフィス自動化ソリューションを提供しています。同社の主力製品である「バクラク」スイートは、経費精算、請求書処理、法人カード運用などの企業支出ワークフローを自動化する機能を提供します。
同社は主に以下の3つの主要製品を提供しています。
- バクラクプラットフォーム:企業の財務、購買、人事などのバックオフィスプロセスを自動化
- オルタナ:三井物産と共同開発したリテール向けデジタル証券投資プラットフォーム
- Ai Workforce:生成AIを活用してワークフローを最適化し、企業データを効果的に活用するソリューション
市場機会と課題
日本は、人口高齢化、労働力不足、生成AIの普及、そして2023年の電子インボイス義務化といった複数の課題に直面しており、企業は財務、税務、購買、人事機能の自動化を加速させる必要に迫られています。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)の成功率はわずか16%に留まり、伝統的な業界では4~11%とさらに低く、主な障壁として経営層のコミットメント不足、硬直化した企業文化、デジタル人材の不足が挙げられます。
急速な成長軌跡
LayerXは目覚ましい成長速度を示しています。顧客数は2024年2月の1万社から2025年4月には1万5,000社に増加し、従業員数は2023年10月の約220名から2025年7月には約430名へと、ほぼ倍増の規模に拡大しました。同社は年間経常収益(ARR)6,800万ドル(100億円)のペースで、日本のSaaS企業として史上最速の記録を樹立する見込みであり、これまでの国内記録(8年)を5年足らずで塗り替えることになります。
投資家陣
今回の資金調達はTechnology Cross Ventures (TCV) がリードインベスターを務め、三菱UFJ銀行、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、ジャフコ グループ、Keyrock Capitalなどの著名な機関投資家が参加しました。TCVはこれまでNetflix、Facebook、Airbnbといった有名企業に投資しており、今回の投資は日本市場への初の参入を意味します。
顧客層と導入事例
LayerXの「Ai Workforce」は三井物産や三菱UFJ銀行などの大企業に導入されており、「バクラク」プラットフォームは一風堂、アイリスオーヤマ、帝国ホテル、積水化学工業といった著名企業に利用されており、多様な業界における幅広い適用能力を示しています。
将来の事業計画
LayerXは今回の資金調達を活用し、米国および欧州市場への事業拡大を加速させ、200名のエンジニアを採用するほか、AWSなどのクラウドサービス大手との提携関係を構築する計画です。同社は2030会計年度までに年間経常収益(ARR)約6,800万ドル(1,000億円)の達成を目標としており、その約半分はAIエージェント事業からの収益を見込んでいます。
業界の競争状況
グローバルに見ると、バックオフィス自動化市場は競争が激しく、LayerXはUiPathやAutomation Anywhereといった強力な競合他社に直面しています。しかし、同社は日本国内での優位性を活かし、精密性やデータプライバシー保護を重視しており、特にGDPR後の時代において、これらの特徴が重要な差別化競争力となっています。
技術革新のハイライト
LayerXの「バクラク」プラットフォームは、AIネイティブなユーザー体験、自動化機能の継続的なアップグレード、そして12名の元CTOと1名のKaggle Masterを含む技術チームによって差別化を図っています。同社の適応型アルゴリズムは規制変更に合わせて進化することが可能であり、これは複雑なコンプライアンス環境下で事業を展開するグローバル企業にとって極めて重要です。
今回の資金調達は、日本のAIイノベーション能力に対する国際投資家の評価を示すだけでなく、日本企業のデジタルトランスフォーメーションが新たな段階に入ったことを意味します。労働力不足の問題が深刻化する中、AIを活用した自動化ソリューションは、日本企業が業務効率を向上させるための重要なツールとなるでしょう。